ケーススタディ
ケース1
父親(母親)が突然入院した…
深夜に電話が鳴ります。
「こんな時間に何だろう、ひょっとして…」と嫌な予感がします。
予感は的中です。
慌てふためいた母親(父親)の声。
思わず緊張して、受話器を持つ手に力が入ります。
電話の向こうから、こんな言葉が聞こえてきました。
「お父さん(お母さん)が倒れた」。
でも、子どもであるあなたまで慌てないでください。
できるだけ早く帰省する
「電話」はさまざまな時間帯にかかってきます。各時間帯で、最短で実家に帰れる方法を常日ごろ、シュミレーションしておきましょう。だいたいでも、親に「○○時頃には、着けるから」と言えば、親も安心できます。
入院中の世話の段取りを行う
自分が帰省できるのが一時であるなら、自分がいない間の病院の世話について検討しなければなりません。
一方の親が元気であれば、その親が中心に看護できますが、元気でなければ、またすでに亡くなっているのであれば、そういうわけにいきません。
兄弟姉妹がいれば、ローテーションを組むなどの協力体制を検討します。
病院によっては洗濯物を引き受けてくれるところもありますが、たいていは家族の仕事です。洗濯をできそうになければ肌着やパジャマを何枚も購入して置いておくしかありません。
手術をするなら、「術後は緊急事態があるかもしれないので泊まり込んでください」と言われることが多くあります。そのあたりも、心の準備が必要です。
完全看護をうたった病院でも、人手不足から家族の力はあてにされがちです。食事の介助を家族が行うケースも少なくありません。
ほんとうは認められていないことですが、家族と偽って家政婦紹介所の家政婦に付き添いをお願いする裏技を使う人が少なくないのも分かるような気がします。ただし、その場合、日中だけでも1万円ほどの料金がかかります。
病院からの退院通告は予想以上に早いので心構えが必要
長期間、患者を入院させると病院の収入は減る仕組みになっています。そのため、「こんな状態なのに、退院しろって言うの?」ということが起こります。
長くても3か月。
通常、急性期を過ぎた1か月くらいで退院をせまられることが多いようです。
短いと、1週間で退院の話をされたという方もいます。
転院をする場合、たいてい転院先は病院で紹介してくれますが、必ずとはいかないようです。
病院から病院への搬送さえも病院で行ってくれず、搬送車を家族が手配しなければならないようなケースもあります。
看護やリハビリは必要なものの病状が安定していれば、介護老人保険施設(老人保健施設)という施設への入所も選択肢のひとつとなります。いずれ在宅での生活に復帰することを目的とした施設です。
この施設を使うのであれば介護保険での利用となるので、まだ認定を受けていないならば先に受けなければなりません。
担当の医師、看護士、医療ソーシャルワーカーなどに詳しいことは尋ねてみましょう。
デビューしたばかりで、「今」のことだけでも大変なことは分かりますが、それでも、先々のことまで見通しておかなければ、後で慌てることになってしまいます。
ひとり在宅となった母親(父親)の心身のケアに注意する
入院した親のことばかり心配しがちですが、家に残った親にも気を配りましょう。精神的なショックはそうとうなもののはずです。
特に、母親が入院し、父親が家にひとり残った場合、家事をできるかどうか確認が必要です。
ご飯を炊けるか、下着などのある場所は分かっているか、お風呂を焚けるかなど心配は尽きません。
生活に必要な最低限度の行為ができるか確認し、さらに便利商品やサービス導入も検討します。
電子レンジで温めるだけで食べられるパックのご飯など、レトルト商品や冷凍食品は重宝です。
また、食事の宅配サービスを使うことも考えましょう。自治体でも行っているかもしれませんが、緊急を要するときは民間会社の宅配サービスがお勧めです。対応が迅速です。
もし、残された親の心身も弱っていて生活に支障があるにも拘らず、介護保険をまだ利用していない場合は、早急に認定を受けるよう手配しましょう。
役所の介護保険担当に電話すれば、手はずをおしえてくれます。ホームヘルプサービスなどを使えると、生活がスムーズに運びます。
介護保険のサービスは、緊急を要する場合であるなら、結果が出る前でも利用を開始することが可能なので相談してみてください。
家電はシンプル機能がおススメ
洗濯機や炊飯器、電子レンジなどの家電は、親の元気なうちにシンプルな機能で使いやすい機種に買い換えておくといざというときに便利です。たとえば、2層式洗濯機などは、洗濯が初めての父親に使ってもらうのは困難です。
食事の宅配サービスをチェック
食事は欠かせないものです。
いざというときに、どのような食事の宅配サービスが使えるか確認しておきましょう。
入院中は介護保険の利用がストップすることを念頭に
入院した親のみが介護保険の認定を受け、ホームヘルプサービスなどを利用しているケースがあります。
入院中は介護保険のサービスは使えないので、ホームヘルプサービスは中断されます。
家庭によっては、「母親(父親)のためのヘルパーが来ているから、父親(母親)は介護保険の認定を受けていない」というような場合があるようです(介護保険では原則、利用者のヘルプしかしないことになっていますが、実際は高齢の夫婦所帯だと洗濯や買い物は、夫婦の分をヘルプしてもらっているケースがあります)。
認定を受けている親が入院すると、家に残った親は即座に困ることになります。
要支援、要介護と思われる状態になっていれば、認定は受けておきたいものです。
住まいから危険を追放
家庭内での事故によるけがや骨折は少なくありません。
できるだけ住宅は危険を避けられるように改修しておきたいものです。
また、地方では、まだ和式トイレだったり、屋外にトイレがあったりというケースもあります。使いづらいと、身体の機能が少し低下しただけでも不自由が生じるので、注意が必要です。
ケース2
病気を患っていた父親(母親)の死亡
入退院を繰り返していた父親(母親)の危篤の連絡。
すぐに、夫(妻)、息子、娘の携帯に連絡し、知らせが来たことを告げます。
とりあえず自分だけでも先に行こうと準備をしていると、また、病院から電話。父親(母親)が亡くなったとの知らせです。
頭は混乱しますが、泣いていてもどうにもなりません。再度、家族それぞれに連絡し、親の死亡を伝え、すぐに帰ってくるように指示します。
勤め先、子どもの学校に忌引きで休む連絡を入れます。予定表を見て、1週間以内の予定はキャンセルします。
喪服と数珠を用意していると、家族が帰ってきます。
実家に向かいます。
連れ合いを亡くし、残された親は嘆き悲しんでいるでしょう。葬儀を出すことと共に、そのケアは子の役目です。
葬儀を滞りなく終えるよう実子が中心となって残された親をサポートする
葬儀を滞りなく終えるよう実子が中心となって残された親をサポートする
残された親は悲しみに暮れていますが、連れ合いのことを、最善の形で見送りたいと考えているでしょう。気持ちに寄り沿いながら、サポートをします。次々にお金を要することがあるので、できるだけ実子が中心に動きます。葬儀のやり方は、地方特有の慣習やしきたりがあるので周囲の方々の声に耳を傾けながら行うようにしましょう。
葬儀が終われば、さまざまな書類の山が待っています。
もし、自宅から実家までの道で書店を見つけたら、葬儀やその後の書類関係についてまとめられている本を求めると重宝します。初めてのことばかりで、戸惑うことになるからです。
看病で気が張っていた母親(父親)は力を落とす可能性が高いのでそのケアを十分行
瞬く間に日は流れます。1週間くらいで忌引きの期間が終わるため、自分は、後ろ髪を引かれながらも、実家を後にしなければなりません。
葬儀が終わって、2~3日の間、自分が都会に戻る前に親のひとり暮らしの段取りを付けましょう。
内容は、「ひとり在宅となった母親(父親)の心身のケア」とほぼ同様です。
介護保険は認定結果がでるまで時間がかかるので、利用したいと考えるならできるだけこの間に、申請をしたい旨の電話を役所にかけるようにしましょう。
わりと元気な親でも、それなりに持病があったり、高齢であったりすれば、「要支援」となることは珍しくありません。
介護保険の利用に抵抗を感じ、「使いたくない」と思っている親が多いのも実情です。でも、ふだんであれば拒む親も、このタイミングであれば気弱になっているので、すんなり受け入れてくれるかもしれません。
「使えるサービスは何でも使う」でなければ遠距離介護は難しくなるので、なるべく利用したいところです。
介護デビューすることになる自分自身のためにもなります。
ただし、親が拒否した場合は、決して無理強いはしないでください。それでなくても、心身ともに疲れ果てておられます。
嫌がっているのに、強いることは追い討ちをかけるようなものです。
交通費はゆとりを持って準備する
葬儀終了後も、1週間ごとに法事をするケースがありますし、また四十九日法要、納骨など、度々、家族揃って実家を訪れることがあります。
交通費がどんどん出ていくことを覚悟してください。
残された親が寝込んでしまうケースもあります。
様子確認のために実家に帰れば、さらに交通費はかかります。
兄弟姉妹、その連れ合いなどとよく相談して、なるべく負担が集中しないようにしたいものです。
もし残された親が介護認定を受けているのであれば、航空会社利用であれば「介護割引」を利用できる場合もあります。
帰省を繰り返しながら、残された親と今後の暮らし方や安否確認の方法を少しずつ話し合う
帰省を繰り返しながら、残された親と今後の暮らし方や安否確認の方法を少しずつ話し合う
度々の帰省で親と顔を合わせる機会も増えるので、少しずつ、今後のことを話し合いましょう。
ほとんどの場合「この家で住まい続ける」という返事が返ってきます。
自立している間は、ひとり暮らしを続けるにしても、何かあった場合にどのようにして暮らしていくことがいいか、機会をみつけて話し合うようにします。
親自身が、施設入所を考えていることもあります。
在宅での暮らしを続けるなら、どのくらいの頻度で自分が帰省するか計画を立てます。
これまでよりは、帰省の頻度を増やすよう心がけたいものです。
また、ひとり暮らしになると、急に具合が悪くなったり倒れたりしても、誰にも気づかれないケースも考えられます。
何らかの形で、「安否確認」を行う策を検討したいところです。
毎日電話をかける、あるいは親からかけてもらう
ホームヘルプサービスや食事の宅配サービスなどにより、
毎日誰かが実家を訪れるようにスケジュールを組む
「新聞が取られていなければ連絡をお願いします」と隣の人にお願いし、
自宅もしくは携帯の電話番号を伝えておく
センサーなどを活用した民間サービスの見守り機器を取り付ける
自治体が実施している声かけによる乳酸飲料配達や、
電話などによる声かけサ―ビスを利用する(内容は自治体により異なる)など
ケース3
正月に1週間帰省して、同じことばかり言う親の言動に愕然
半年ぶりに家族揃って帰省しました。久しぶりに会う母親の笑顔は同じなのに、おやっと思わざるをえないことがありました。
「今日の晩御飯は何にしよう」と日に幾度となく聞いてくる母親に、嫌な予感を抱きます。
夕食は、母お得意のカレーライス。ルーから作ってくれるのでおいしいのです。
「僕の好物を覚えてくれていた。
やっぱり、だいじょうぶ。おかしいと感じたのは思い過ごしだった」とひとり胸を撫で下ろします。
けれども、次の日も朝から「今日の晩御飯は何にしよう」とまた何度も聞いてきます。そして、夜になって母親は再び、カレーを作りだしました。
その翌日も同じです。また、食卓にはカレーが出されます。
大学生の子どもは、こんなことを言いました。
「おばあちゃん、やばいんじゃないか。俺に小遣いを3度もくれたよ」
自分の頭にも、「もしかして・・・」という言葉が消しても消しても、また浮かんできます。
認知症かどうかの確認をする
おかしいかなと思ったら、なるべく早い段階で専門医を受診します。
自分の親に「痴呆」という病名を付けられることは、子にとって「恐怖」「避けて通りたいこと」と言えるでしょう。そのため、ついつい受診が遅れてしまうケースが目立ちます。
病名が分かれば、認知症の進行を遅らせる治療もあります。
また、認知症ではなく、他の病気のために混乱していることもあるようです。その場合、病気の治療を行えば、認知症の症状はなくなることもあります。
認知症の診断は難しいので、かかりつけの内科医などに相談してもなかなか判明しません。
紹介を受けるなどして、必ず専門医を受診してください。かかりつけの病院がない場合、地域の保健センターなどでも情報を提供してくれるでしょう。
認知症の場合は、その後のひとり暮らしのサポート法を考える
認知症だと判明すれば、ひとり暮らしを継続できるかどうかの判断が重要になります。
医師にも確認してください。
ただ、医師によっては、認知症=ひとり暮らしは不可能と決めてかかることもあるようです。
介護保険を申請していない場合は、至急、申請します。医師の意見を参考にすると共に、担当のケアマネジャーにもよく相談しましょう。
「認知症」の場合、身体の病気以上に、ときどきしか親と顔をあわせない遠距離介護では、その様子を察知しにくくなります。
ケアマネジャーとの連携は、欠かせません。
どういうケアプランを立てるかによって、また症状によっては、認知症でもひとり暮らしは可能となります。
これから事業所を選ぶ方は、何軒かにあたり、こちらの話によく耳を傾けてくれそうなケアマネジャーのいる事業所を選ぶようにしてください。後々、ずいぶんやりやすくなります。
また、担当となったケアマネジャーには「在宅はもう限界と思うときが来たら、必ず言ってほしい」とお願いしておくといいでしょう。
親が何ができて、何ができないか、よく観察する目を持つこともひじょうに重要になります。
たとえば、火の始末があやふやな場合は、即、危険が迫ってきます。ガスコンロなどは火の出ない電磁調理器に、ガスストーブや石油ストーブはエアコンやホットカーペットにというように、早急に策をとる必要があります。
「認知症」とひと言で言っても、その症状は千差万別で、特に初期ではまだらぼけ状態であることが一般的であり、正気のときはごく普通の状態です。しっかり観察してください。
日常の様子は、担当のホームヘルパーに聞くのもいいでしょう。
親の家を訪問してくれている時間を見計らって電話し、様子を聞くようにします。連絡ノートを作り、様子を書き込むよう頼んでいるケースも多く見られます。
隣近所の人にも、「認知症」という病名を出すのはためらわれても、「うちの親、最近物忘れがひどくなったのでご迷惑をおかけするかもしれない」と話し、ときどき様子を尋ねてみるといいようです。
お金の管理にも心配があれば対策を立てる
認知症の症状が出ると、お金の管理があやふやになることが多くなります。
それを狙った悪徳商法も盛んで、狙われてしまうケースが多発しています。
近所に子どもなどの親族がいるようなケースでは、その子が管理するなどして、親の手元に権利証など大切な書類は置かないようにします。
ただ、身内といってもお金の管理となると問題がある場合も多いようです。
全国の社会福祉協議会が窓口となって「日常生活自立支援事業」というサービスを行っています。
大切な書類を貸し金庫で預かったり、定期的に生活費を届けてくれたりするサービスもあります。
さらに認知症の状態が重度になれば、成年後見制度の利用も検討すべきでしょう。
詳細については、地域福祉権利擁護事業の窓口となっている社会福祉協議会でおしえてくれます。
ケース4
もう2人暮らしは無理だ「帰ってきてくれ」
故郷の親からのUターン催促電話
両親は共に80代となりました。近所に暮らす親戚の助けもあって、なんとか2人で暮らしてきました。
けれども、最近父親は足腰の痛みが激しいようです。母親の背中も丸くなってきました。
正月に帰省したとき、
「おまえ、いつ戻ってくるんだ。長男なんだから、しっかり頼んだぞ」
父親が言いました。返答に困って笑ってごまかし、話をそらせました。
両親が自分にUターンを望んでいることはずっと以前から気づいていましたが、自分にはそのつもりはありません。
仕事を辞めることはできないし、子どもたちも東京の大学に通っています。
しかし、昨晩めずらしく母親から電話がかかってきました。
「いつ、こっちに戻ってきてくれる?待ってるよ」
いつになく気弱な母親の声に、「帰るつもりはない」とは言えませんでした。
両親と正面から向きあう
両親は、子どもが戻ってくるものと信じているのに、こちらにはその気が無い…。
子としては、この気持ちの食い違いに、恐らくずっと前から気づいていたのではないでしょうか。気づきながら、親を悲しませるのがつらく、ここまで触れないようにしてきたのだと思います。
確かに、「Uターンできない」という宣告は、望んでいる親にとっては、そうとうつらいものだと思われます。
しかし、できもしないのに、「できる」と期待を持たせギリギリの段階になって否定するのは、さらに親にとって残酷な仕打ちになると予想されます。
逃げていないで、親と向きあいましょう。
どう考えてもUターンが無理であるなら、はっきりそのように言うしかありません。
その上で、両親二人での暮らしが限界に達しているのであれば、どのような方法を取るのがいいか、親子でじっくり話し合いましょう。
子の家かその近所に引っ越してくる気持ちがないか確認します。
子が親の家に定期的に通う「遠距離介護」を提案する
親が都会への「呼び寄せ」に否定的ならば、介護保険のサービスを使うなどして、自宅で安心して快適に暮らす方法を検討します。
子の帰省の頻度を増やし、通いながら子が親の老後を見守り応援する「遠距離介護」という方法を取る親子が増えていることも話しましょう。遠距離介護を行うにあたっては、兄弟姉妹、その連れ合い、孫まで含めて、それぞれができることを相談してより良い形を考えます。
施設への入所も選択肢のひとつとして検討する
「都会に行くのは嫌」「身のまわりのことはできるが、2人暮らしは孤独だし生活面でも不安」と言うのであれば、施設入所もひとつの選択肢です。
介護保険を利用するほどでもないというケースでも、ケアハウスや有料老人ホームといった施設は入所の対象になります。
夫婦揃って入れる個室もあります。
ケース5
両親共、もうすぐ90歳
特に病気は無いが2人にしておくのは不安になってきた
長寿になったものです。
いつの間にか父89歳、母87歳。2人共健康で、いまだ家の横にある畑に出ています。昨日も、ジャガイモだの大根だの入った小包が届きました。
夜、電話しました。
「野菜、ありがとう、で、そっちの様子はどう?」
「何―、えーっ」
母親は耳が遠いため、こちらの言ってることが聞き取れないようです。その後、一方的に意味のわからないことが話され、電話は切られました。
受話器を置き、このままでいいのだろうか、という思いに身をつまされます。
いつ何があってもおかしくない年齢なので、娘としては心配なのです。3日に1回は電話していますが両親とも耳が悪く、いつも話がかみあいません。
もっと頻繁に帰るべきだと思うのですが、フルタイム勤務なので、帰省は盆正月だけ。
一度、両親に東京に出てこないかと誘ったこともありますが、「ここを、離れるつもりはない」と一蹴されました。
ため息をつきながら、今後どうしたものかと頭を抱えます。
「みまもり」体制を築く
いくら元気とはいっても、年齢的に心身の機能は低下しているので、ホームヘルパーに入ってもらうことを勧める時期にきています。
買い物や洗濯を担ってもらえるだけで、ずいぶん生活は楽になります。
見守りにもなるので、そろそろ介護保険の申請時期です。
それでも、「いやいや、まだまだだいじょうぶ」と言うのであれば、ボランティアのヘルパーなどを頼み、話し相手だけにでも、家に誰かが定期的に来てくれるようにします。週に一度でも、誰かが様子をのぞいてくれれば、子はその人から、親の現状を聞くことができます。
ヘルパーなんて不要、というのであれば、親の暮らす自治体に「安否の確認サービス」を実施していないか問い合わせます。民間企業が実施する見守り機器によるサービスも安心感があります。
あるいは、何かあった時にボタンひとつで緊急事態を通報できる「緊急通報システム」はたいていの自治体で実施しているサービスなので導入すれば少しは安心です。民間企業でも実施しています。
帰省の回数を増やす
盆正月だけで帰省は精一杯、という気持ちは理解できますが、心配であるならもう少し帰省頻度を増やす方向で検討します。
兄弟姉妹や、その連れ合いにも協力を求めましょう。
耳が遠くても聞き取りやすい電話機に代え、ファクシミリやメールも試してみる
遠く離れて暮らしていると、電話は重要な連絡ツールです。
耳が遠くても聞き取りやすいように開発された高齢者向けの電話機もあるので交換するのも方法です。
音声を大きくできるタイプや、音声を振動に変え、頭蓋骨を通して聴覚器官に直接伝える骨伝導タイプも各社から出ています。
ファクシミリを導入するという方法もお勧めです。
大切な連絡も文字にしておけば理解しやすく、「言った」「聞いていない」といらぬ親子けんかをしなくて済みます。
導入するときは、なるべくシンプルな機能の機種を選び、使い方をゆっくり丁寧におしえます。さらに不安であれば、使い方を大きく書いてファクシミリの前に貼っておきます。
また最近では高齢者向けの携帯電話も開発されています。「高齢の親に携帯メールなんて無理」と決めつけていませんか。
70代80代の親世代に使い方をおしえてコミュニケーションツールとして役立てているケースはたくさんあります。
メールであれば、兄弟姉妹・孫世代・親戚などを巻き込むことも容易です。