遠距離介護コミュニティ

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お悩みQ&A

Q&A
遠くで暮らす親が倒れたら…。
そのとき、私たちはどうすればいいのでしょう。
パオッコ会員の体験や知恵から、Q&Aを作ってみました。
介護に『正解』はありません。
100組の親子がいれば100通りの方法があります。
でも、部分的に参考になることも!似た立場の仲間の声をお届けいたします。

老親のひとり暮らしは無理ですか?

A
「年老いて、ひとり暮らしをすることは不可能」と考えている子世代も多いようです。
その先入観のために、親と話し合いもせず、「呼び寄せ」を強行するケースもみられます。
親を思う気持ちが強いための行動なのかもしれませんが、親の人生は親のものです。
判断力がある場合は、話し合いをして親の意向を尊重したいものです。

親はどこでどのようにして暮らしたいと思っているのでしょう。聞いてみませんか。
年老いても、日常の動作が何とかできる状態であれば、環境を整えることでひとり暮らしは不可能ではありません。
介護保険をはじめ、サービスはいっぱいあります。
ある程度は、親が「できなくなったこと」をサービスや環境で補うことができます。
実際、90歳を過ぎてもひとりで暮らすお年寄りは大勢います。

会員の声より

北国でひとり暮らしの母は82歳。去年の冬は寒さで体調をくずし、救急入院。退院後、千葉の弟の家で半年ほどすごしました。
が、慣れないところで暮らすストレスで大変そうでした。
自宅に戻った母は、家を改築し、ベッドを1階に移し、暖房器具を新調して暖かく過ごせるようにしました。

(東京都・女性50代)

親の異変を察知する方法は?

A
親に老いを感じはじめても、子世代はついつい忙しくて帰省の回数もへりがち、ということが多いのではないでしょうか。

ときおり、「どうしているかな」と気にかけても、そのまま2ヶ月、3ヶ月はすぐに過ぎていきます。

親が元気でも、電話などで連絡を密にとっておくことは大切です。
親の多くは、子に対して、とても遠慮がちだからです。
「子どもに迷惑をかけたくない」と考えているため、よほどのことがないと何も言ってこないというケースも少なからずあります。

できるだけご無沙汰せず、定期的に電話をするようにしましょう。
「何か変わったことはない?」。
特に話すことがなければ、これだけの会話でもいいのではないでしょうか。

電話をするタイミングをみつけることが難しければ、メールにトライしてみるのも方法です。
パオッコの会員のなかには、親に携帯電話をプレゼントして、日ごろの交信ツールに役立てている人もいます。

会員の声より

父親(68歳)は拡張性心筋症。母親(66歳)はひざ、腰が悪く、今後のことを考えると不安です。(現在はなんとか自立しており、父親は自営で仕事をしており、母親も家事をこなしています)両親とも、「子どもには迷惑をかけたくない」との思いが強く、なかなか本音を聞けません。

(神奈川県・男性30代)

おとなりを頼ると迷惑でしょうか?

A
たとえば、親の家に電話をかけるとします。何度かけても親が受話器を取らなかったとしたら…。
子はとても不安になります。「倒れているのではないかしら」と。

近距離であれば、ちょっとのぞきに行くこともできますが、遠方であると困難です。
そんなときに頼りにしたくなるのが、おとなりなど近隣の人たち。

常識的な時間帯であるなどの配慮をすれば「様子をのぞいてもらえませんか」とお願いしてもいいのではないでしょうか。
ただし、お願いするためにはそのお宅の電話番号を知っているということが大前提。
電話番号を教えてもらうためには、帰省したときにあいさつをし、「何かのときにはよろしくお願いします」といえる人間関係を築いておくことが大切です。

遠距離介護をするとどんなことに困りがちですか?

離れているための困りごと

A
パオッコでは2005年にアンケート調査を実施しています。
それによると、困ることは多い順に「お金」「体力」「思うように通えないことへのじれんま」といった点があがってきています。

距離が遠いということで、交通費がかかったり、往復に時間と体力を要するということはさけられないといえるでしょう。

けれども、親も子も住み慣れた家を離れずに、自分らしい暮らしを継続できるというメリットもあります。
普段は別々に暮らすことで、精神的なストレスがかかりにくいという声も多いです。

介護保険のサービスを利用させたいのですが・・・

A
まずは、親の暮らす区市町村の窓口に介護保険の利用申請をおこないましょう。
詳細については、役所の「介護保険担当窓口」に電話をして聞いてください。

あるいは、親の暮らす地域にある「地域包括支援センター」に問い合わせましょう。
「地域包括支援センター」は介護のこと全般について相談にのってくれる機関です。
所在地や電話番号は役所でおしえてくれます。

介護保険の申請をすると、調査員が親本人のところに訪問し、面接調査が実施されます。調査票に従って質問が行われます。
このとき、親は気兼ねとプライドから自力でできないことも「できます」とか「だいじょうぶです」と言いがちです
。心配な場合は帰省して付き添う方がいいでしょう。
子の言葉も「特記事項」として、調査票に書き込まれる場合もあります。

会員の声より

月に1度の遠距離介護を続けていましたが、ある夜、母が救急入院しました。同じ市内に住む叔父から「深刻な状態ではない」と連絡が入り、私と弟は翌朝の新幹線で駆けつけました。
例年にない寒さと疲れで、一時的に血圧が上がり、めまいがしたとのこと。

幸い5日目には退院できました。
が、母もひとり暮らしが不安になったので、寒い間は弟の家に連れてくることになりました。

それにしても、母が自分で119番できたから良かったものの、もし意識がなくなっていたら、どうなっていただろうと思います。
もっと早く介護保険を申請し、ヘルパーなどのサービスを受けさせれば良かったのか?と反省します。
弟の家で肩身の狭い思いをせずに、ゆっくり疲れをとって欲しい。
暖かくなって自宅に戻りたいと言ったら、また対応を考えるつもりです。

(東京都・女性50代)

介護保険を申請するほどではありませんが・・・

A
介護が必要というほどではないけれども親のことが心配、ということもあります。

自治体では、介護が必要となることを予防しようとの観点から、高齢者向けにさまざまなサービスを実施しています。
内容は自治体によって異なります。

たとえば、「安否の確認サービス」というものがあります。
定期的に訪問・電話したり、乳酸飲料を手渡しで配達したりするサービスです。
「緊急通報サービス」も喜ばれることの多いサービスです。
具合が悪くなったときに、ボタンひとつで通報できる家庭用のナースコールのようなシステムとなっています。

このほか、「食事の宅配サービス」などもありますので、役所や地域包括支援センターなどで相談してみましょう。

また、地域によっては住民によるボランティアの家事援助サービスなどを行っている場合もあります。
地元の社会福祉協議会で情報提供してくれます。

きょうだいが同居で介護してくれています

A
きょうだいの誰かが、親と同居か、あるいは近所で暮らしていて主たる介護者となっているケースもあります。
義姉妹が「嫁」の立場で介護を行ってくれている場合もあるでしょう。
任せきりにしないで、定期的に通ったり、連絡を取ったりして、不担を分担することが大切です。

そういったケースで、もっとも気をつけなければならないのは、日々の介護をおこなっているきょうだいの苦労を理解しないで、「もっと、しっかり介護を行ってほしい」とか「おかあさん(おとうさん)、さみしそうよ」など文句を言うことです。

毎日、介護をおこなっている者の立場をよく理解して、その苦労をねぎらう姿勢を大切にしてください。
「ありがとう」の気持ちと言葉を忘れないようにしましょう。

実家に訪問販売が出入りしているようです。

A
高齢者だけの世帯には、訪問販売の業者が出入りしていることがよくあります。
必要性の感じにくい家の工事や、健康食品、消火器、布団など…。

その業者が悪徳なのかどうかの見極めは難しいです。が、大切なのは、「悪徳」かどうかにかかわらず、不要なものは購入しないことだといえるでしょう。

防ぐためには、高齢者を標的とした悪徳商法が多発している現状を話し、「何か大きな買い物をするとき、したときには一声かけてね」と常日頃親に言っておくといいでしょう。

もし、契約をしてしまった後に知らされた場合は、クーリングオフ制度を利用して契約解除することもできます。消費者がいったん申し込みや契約をした場合でも、一定期間は消費者からの一方的な撤回や契約解除を認める制度です。
詳細は地元の消費生活センターに問い合わせればおしえてくれます。

会員の声より

先日、実家の近所に暮らす民生委員さんより「お宅に工事業者が入っているようですが」とお電話をいただきました。
不要な工事、間一髪。助かりました。

(東京都・女性50代)

もしかしたら、親は認知症かもしれません

A
もしかしたら認知症…?もしやという思いが、大きなストレスとなってくることもあります。
できれば、自分の親が認知症だなんて、認めたくないのがホンネではないでしょうか。

悩んでいてもなにも解決しません。とにかく専門の病院を受診させるようにしましょう。
ここで、どこの病院に行けばいいのか戸惑います。

認知症の患者を診療する主な診療科は老年の精神科と神経科、神経内科です。
もの忘れ外来といった名称の科を設けている医療機関もあります。
はじめての受診は家族にとってもとても勇気のいることでしょう。
適当な病院や診療所がみつからない場合は、地域の保健センターや地域包括支援センターなどで相談してみましょう。
また、内科などにかかっているのであれば、その先生に相談して専門医を紹介してもらうことも一案です。
そして、もし認知症と診断されても、必ずしも即、親のひとり暮らしや2人暮らしが無理になるというわけではありませんから焦らないで。

すぐには同居や施設入居という選択ができないことも多いでしょう。
介護保険の申請がまだなら、早めに申請をおこなってください。
親は何ができて、何ができないかをしっかり観察しながら医師やケアマネジャーに相談しつつ、親が安心して暮らせる環境を構築することが大切です。

会員の声より

地方に住み東京へ母の介護に通っています。
ひとり暮らしで認知症が進み、3分ほどのところに住んでいる弟のマンションへ夕食を食べに行く毎日でしたが、私が2年前に夫を見送り独り身になり、週2、3日泊まって介護するようになりました。

しかし、弟の家族と母が住む場所を入れ替え(貧血がひどくなったため)歩くのは楽になったのですが、母は錯覚がひどくなり、目覚めと同時に「家に帰りたい」と言い出し、夜寝ても「帰る」と起き、家族の顔や名前も分からなくなってきました。
言動が凶暴となり、涙ぐんだり、感情の起伏が激しいときがあります。ショートステイに行くと、症状が進むような感じがしてなりません。

(栃木県・女性60代)

親戚が「親の介護は子どもが行え」とうるさく言う

A
「どうして一緒に暮らして世話をしないんだ」とか。「施設に入れるなんて、親不孝者」といった非難。

都会ではあまり耳にしなくなりましたが、地域によってはまだこういう考え方が残っている場合もあります。

指摘されると、「自分は冷たい人間なんだ」と落ち込んでしまいがちです。

けれども、いろいろな事情で「通いの介護」を選択したのです。それが、親にとっても子にとっても最も幸せな方法だと思ったのだから、そういう「結論」を出した自分たちを信じましょう。

親を施設に入れるのは、心苦しいのです

A
親が病院や施設に入院、入所をしても遠距離介護が終わるわけではありません。
もともと、遠距離介護の大きな意味は、親の精神的な支えになることです。
病院や施設は、生活をする上で治療や介護は行ってくれますが、精神的なケアは子どもの役目です。
入院や入所によって、新たな人間関係が生まれ、ストレスがたまっていることもあります。

定期的に顔を見に行くことで、親子の会話を持つようにしたいものです。あまり行けない場合も、手紙を送るようにしてはどうでしょう。ファックス送信をしてもいいでしょう。

会員の声より

父親は実家のすぐ近くにできたグループホームに入居しました。
認知症と診断されています。最初は施設入居に抵抗があったようですが、すぐ近所ということで納得しました。
入居してからも、わたしは在宅のときと同じように月に1回の通いを続けています。通っていったときは、一緒に実家で泊まることもあります。

(東京都・女性50代)

■パオッコ会報 2007年No.9より抜粋

文責:太田差惠子(パオッコ理事長

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